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増加する子供たちの家庭内暴力 スペイン

資料:El Mundo 2014年12月5日
http://www.elmundo.es/espana/2014/12/05/5480ab59268e3ec9578b4578.html
20141206135650a81.jpg
写真:R少年。Sergio González Valero撮影

2013年に子供の家庭内暴力被害を保護者が裁判所に通報した件数は9,000に上った。一年間だけでこの数字だ。親子間の対立が原因で家出をしたり、親から家を追い出された若者たちは13,000人と見られている。
専門家はこの現象を「この頃の暴力」と呼ぶと同時に、青少年を不健全な環境から守る対策が欠如していることを嘆いている。

本紙は、二人の少年にインタビューをした。

H少年の場合

15歳の時、僕は怒りの塊だった。
包丁を片手に僕の父親を追い回した。
殺されると思って、自分の部屋に飛んで逃げ込んだよ。


一体、どのようにして家族との「思い出のアルバム」が引き裂かれることになったのか。
実際に会ってみると、想像されがちな、所謂扱いが難しそうな少年ではない。
いつの日か、再び家族から温かく迎えられる日が来るだろう。

Hは17歳。将来はブローカーになりたいという。彼は
「父親を追いかけた時の、あの目が忘れられない。恐怖よりも悲しそうな目をしていた」

母親に向かってこう怒鳴ったんだ。「生きたままぶった斬ってやる」って。

インタビューの最中は50センチほどの距離をあけていたが、この少年が母親が泣くまで足で蹴りあげたことなど、誰も想像がつかないだろう。
窓やドアを壊してソファを外に放り出したり、まるで西部劇のようにテーブルを真っ二つに割ったりするような、家庭内暴力を振るう少年には到底見えないのだ。

少年の教育履歴を見る限り、ぶった斬るだとか殺すだとかおよそ人を脅すような人間とは誰も思わないだろう。ましてやミンチにしてやるなど、まるでハンニバル・レクターまがいのことを言うとは。

何かが間違っている。

「ある日、包丁を持って父親を追いかけたんだ。カッコいいとかいうんじゃなくて僕の上に立つ奴を消したかったんだ。

15になった時、僕自身は怒りの塊だった。
父親は殺されると思って、慌てて自分の部屋に逃げ込んだ。あっちはドアを閉めようとするけど、僕は閉めさせないように抵抗した。あの時の顔、今でも覚えてる。あの目も。怖いっていうよりも残念そうな、悲しい目をしてた」

Hはタラゴナの出身。まだ17歳なのに71年の人生を歩んだかのようだ。
家庭内で問題を起こす少年用施設には10月に入所した。今はそこで彼を苦しめ続けてきた「怒り」を癒している。

エンジニアの父親と看護助手の母親の元で育ったHは13歳までごく普通の子供だった。仲の良い家族で、Hは学校の成績も優秀。幸せな幼少期を過ごした。

他にも「この売女!」と罵声を浴びせたこともある。思春期にハッシシを使用したこともある。

- 将来のことは考えてる?

- ブローカーになりたい。


Hは家にいた時は拳で家中を叩きつけていた。暴れて家中の家具を壊しまくっていたのはつい3ヶ月前のこと。しかし、本人の話ぶりを聞いていると、まるで遠い昔のことのように思える。

継父母とは挨拶のキスを交わすものの、相手の目はほとんど見ない。会話の間は腕組を外さない。彼自身の態度が全てを物語っている。

「中2の時に悪い仲間とつるむようになって、それから大麻を始めたんだ。最初の頃は週末だけだったんだけど、段々頻繁になってしまって。週中でも吸うようになって、終いにはいつも吸ってるようになってしまった。

一日に10本は吸ってたかな。サッカーをやりに行く。じゃあその前に一服。自転車で出かける時は大麻を持っていく。登校する時は、校門をくぐる前に一服するっていう感じ。

「親からどんな目で見られようが、吸ってることを知られていようが、別にどうでも良かった。家に着くと自分の部屋に直行してすぐにベッドに潜り込んでた。親は知ってたと思うよ。当然だよ。小遣い減らされたし」

「だから、ハッシシを買う金を自分で稼ぎ始めたんだ。学校とかで大麻の売人したり。市内だけじゃなくて県内を駆け回って売ってたよ。
大麻は友達が持ってたんで、それを僕が客に売るんだよ。20ユーロ分売れれば売上金はネコババしちゃってさ。友達には『サツに見つかって取り上げられた』って言い訳してた」

「盗みもしてたよ。人んちの車庫に入って自転車盗んだりとか。家にある金目のものも。
親のタブレットも盗った。あとは包丁の研磨器とかテーブル用品だったりテニスのラケットも持って行ったこともある。

それで、カウンセリングに連れてかれた。
お前の問題をどうにかしないと、って言うんだ。
でもさ、車を修理屋に持って行って直すのとはわけが違うんだよね。僕の親だって、僕の問題の一部なのに。

ハッパが切れると、イライラしてキレまくってた。
家に帰るのがいつもよりも15分遅いだけで、「もうやめてくれ」って言いたくなるほど問い詰められてた。
ある日「畜生!お前ら、殺すぞ!」ってブチ切れて、ナイフを掴んで母親を捕まえようとしたんだ。

喋っているかと思うと、突然沈黙する。

まるで、話している最中に「喋ってはいけない、話してはいけない」と、我に返るかのように。
そういう時は、いつも「まあ、そういうことさ」という台詞で締めくくる。

「父親のことは腕を叩いた。殴りすぎて黒痣ができるまで。まあ、そういうことさ」

「母親には足で蹴りだよ。泣くこともあった。ベッドの上で。このクズ、なんで泣くんだよ!って。まあ、そういうことさ。

「母親の方は、僕の目を覚まさせて高校に行かせたかったみたい。僕のためになるから、って思ってね。そしたら、僕は多分、怒鳴り始めたのかな。
『お前なんか死ねばいいんだ、生きたままぶった斬ってやる』って。まあ、そういうことさ」

少年はあまり詳細を話したがらない。
話すだけで吐き気がするし、他人に知られることが恥ずかしいからだ。
この少年は、もうあの時の少年ではない。もうあの時とは違う少年なのだ。

少年の左足に目が惹きつけられる。ある特定の内容を話すとき、左足が微かに震えているのだ。例えて言うなら、お盆の上に載ったゼリーが揺れるかのような。

両親が少年を施設に入れたのはもう2年前のことだ。治療と保護観察付きで出所してから12ヶ月経ったものの殆ど瞬きがない。今までやってきたことは何だったのか。この夏に全部吸ってしまった。

今の施設にどうやって入ったかというと、大麻を吸って酔ってる時に騙されて連れられてこられて、そのまま入所させられた。
ある日、少年の両親が「マドリッドにいるおばあちゃんが病気だから見舞いに行くよ」と言って車に乗せられた。そのまま車中はずっと眠りっぱなしで、起きた時は人口600人の村のすぐそばの、この施設だった。

「僕は今、頭がスッキリして回転も速くなった。だから過去に自分のしたことで苦しんでる。
父親に暴力をふるってた時の顔が頭から離れないんだ。落ち着いていた姿とかも。僕自身の中で不安のタネになってる。だからここから出たくない。出るのが怖い。
弟が僕と同じようになってしまったら、と思うと怖い。弟も親に対して怒鳴るようになった、って聞いてるんだ」

声を荒げることもなかったH少年はずっと使ってなかった言葉、「どうぞ」と「ありがとう」と言った。
今は通信教育で高校の2年を履修している。屋外で労働し運動もする。さらに読書を楽しむまでに回復した。今読んでいる本は『沈黙の音楽』という題名。


- この本はね、お父さんがいなくなっちゃった男の子の話なんだ。

- へえ、面白い?

- ちょっと変わってるよ。

- どうして?


- だって、この本会話がないんだ





R少年の場合


「ガラスで自分を傷つけた」

Rはまだ未成年。施設には夏に入所した。
Rの母親に乳癌が見つかった。R自身の中には別の"腫瘍"が巣食っていた。
きっかけはインターネットのルーターだった。母親がうっかりルーターの線を外してしまい、それを責めたてた。

- そんなに大事なことだったの?

- 僕にとってはね。ネットの接続が切れるなんて、ものすごくイラついくよ。貴方にはわからないだろうけどね。
部屋のドアを思いっきり叩いたり、物も壊しながら「このバカ女!元に戻せ!」とか怒鳴った。
あまりにも頭に来たんで、ガラスで手を切った。僕は怒ると電気配線みたいに頭に血が上るんだ。

- ルーターのケーブルって、どこにでもあるケーブルじゃない。


爆発物処理をする時にとても繊細で気を使う作業をするような気持ちで、会話を進めた。Rの心の中はとても複雑にできている。言葉や質問を慎重に選んで爆発させないように。

この少年の父親は職業軍人、母親は薬剤師だった。少年が4歳の時に離婚。両親の離婚はまだ幼かったRの精神状態を不安定にさせた。

「離婚で僕はものすごく傷けられた。最初はなんだかよくわからなかった。どうして親が一緒にいないのかが。
人を信用しなくなったのはあの時からだと思ってる。他人だけじゃない。自分のことも母親のことも信用してない。僕の母親は父親に対する怒りを溜め込んでたし、僕は僕で母親に対しての怒りが溜まり始めたんだ」

5回転校したことについて話を聞かせてもらいたい、何も言わないから。

「麻薬を始めたのは13の時だったと思う。僕の中は掃き溜めのような感じで、何もやる気が出てこないんだ。だから悪いことをしても、それを正当化する言い訳をいつも探してた。

学校で吸ってるのが2回見つかって退学させられた。一度、母親に20回分のハッシシを見つけられたことがある。重さは4gくらい。僕の机の上に空の袋を置かれたんだよ。14のときはもうかなり暴力を振るってたね。母親のことは完全に嫌ってたし。
母親のする事なす事みんな反吐が出たよ。言うことから性格も着るものも話し方も。本当に何から何まで嫌いだった。

R少年は、世界で一番天使のような顔しているのではないか。その瞳はビリー・ザ・キッドに出てくるキャラクターのようだ。完璧な歯並び。映画俳優のように整った笑顔。共感ができて親切。長身で金髪、まるで広告ポスターから抜け出てきたモデルのようだ。そして、今時の17歳の乱れたスペイン語を話さない。綺麗で完璧な発音だ。

- この週末、母親と話をしたんだ。

- うん。どうだった?

- だんだん良くなってるよ。僕の中で色々なことが解決できてきてるんだと思う。


以前は話すらしなかった。
インターフォンを拳で叩いた時、手の骨が割れてしまった。その手は、今では握手もできるようになった。

「ストレスが溜まりすぎていた。家に帰って母親がいるとウンザリだよ。僕の後をついてまわるんだから。それでルーターの事件が起きたんだ。血まみれの僕を外に放り出したんだ。警察が来て、興奮してる僕を落ち着かせてくれた。そのあとニーニョ・ヘスス病院ていう精神病院に連れてかれて、僕の今までの人生を聞かせてくれって言われた」

Rの母親も父親も知らん顔。父親が引き取った兄弟2人とは、2回しか会ったことがない。
しかし、Rはブロックノートを一枚一枚めくると気持ちが和らぐかのように、私たち記者には「告白」をしてくれた。

平均的な少年たちが初めてディスコに行くようになる年には、RはすでにハッシシだけではなくMDMAやヘロインも使用していた。

「あの頃は喋るのがひどく億劫だった。母親から何かにつけて叱られてた。僕は怒りがただ溜まって行くだけ。よく『そういう態度はやめなさい』って言われてた。
僕の横に座って、一体どうしたんだ、お前が心配だ、って。なるべくそういうシチュエーションにならないようにはしてたんだけど。あの頃、僕は殆ど何も見えていなかったから。
え?なんて答えたか?『このバカ女』って言ったよ」

- 君の話はすごくわかりやすいよ。

- 本当?そんなこと言われたの初めてだ。



部屋の真ん中には伝説のピンボールがある。薄暗い午後にはそれを灯す。
今のRには母親と一緒に暮らす青写真がある。思い描く将来は薬物のない生活、頭の中が泡立った状態で無い、すっきりとした思考。

インタビューの間、3回は「ここを出たら」を枕詞に話しを始めた。そういう時は、彼の話にただ耳を傾けて、好きなだけ喋ってもらった。
今日は少し喉の調子が良くないという。でも話したい。
「話すと喉が痛いんだけど」といって、唾を飲み込んだ。

「考えたんだ。こういう親子の問題について。誰も悪くない。いつも『コミュニケーションが足りないからだ』って言われるけど。でも、解決はできるよ」

片付けをする。
ベッドメイキングをする。
ゆっくりと背筋を伸ばして歩く。
人の話に耳を傾ける。
意味のある内容を話す。

「土曜に母親と話したんだ。手術の前だったから『頑張って』って励ました。
生まれて初めて僕の口から思いやりの言葉を言われたから、もの凄く喜んでた。すぐに感動するんだよ。それでね、なんて言ったと思う?『これで何もかも変わってくれれば。私とRの2人が元気でいられればそれでいい』って言ったんだよ」

次の週末も母親は息子を訪ねてきた。その次も、その次の週末も。そして今では毎週末面会にやってきている。
情報処理技術者になりたい、という将来の夢もR自身の口から母親に話している。
「お互いのコミュニケーションが足りなかった」ことから「地に足がついた状態ではなかった」。それがルーター事件の引き金になった。

母親の乳房がなくなっていることは、少年も服の上から見るだけで気づいていた。でも、ハートは決して失われることはない。

この記事は、マドリッドのレクラ・ギンソ・デ・タッホ施設の入所者とのインタビューに基づく。
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楽天ブログから引っ越してきました。10/13の記事は全て2011年に投稿したものです。
できるだけ日本語や英語で紹介されないような、マイナーな記事を選んでいます。たまに日本の記事をスペイン語に訳して紹介することもあるかもしれません。
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